78JIS字形とは何か

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[07-03-11]


 1. 83JIS改正
 2. 規格票の刷による違い
 3. 著者・筆者・ベンダー等による違い


表外漢字字体表(印刷標準字体)の策定に向かう大きな要因が、「JIS漢字問題」といわれるものです。
1983年のJIS改正(単に第一・第二水準とも称される JIS X 0208 <注1>)では、相当数の字形が変更され、その内の多くが新字体風の略体に改められました。これらは、「拡張新字体」とも呼ばれていますが、これが、「JIS漢字(問題)」としてしばしば問題視されてきました。
このことは、表外漢字字体表(第22期国語審議会答申)でも、「表外漢字の字体問題」として大きく取り上げられています。<注2>

2000年12月に国語審議会答申「表外漢字字体表」が出されましたが、04年2月には、この「表外漢字字体表」(印刷標準字体)に対応したJIS改正が行われ(JIS X 0213 追補1:2004)<注3>、07年1月に発売された Windows Vista には、JIS X 0213 追補1 に準拠した書体(MSゴシック、MS明朝、メイリオ)が、搭載されました。<注4>

そこで、問題の発端となった83JIS改正と、それ以前の78JIS字形(JIS C 6226:1978 <注5>)について、改めて見ることにしたいと思います。


1. 83JIS改正

83JIS改正では、以下の4点が変更されました。
 (1) 非漢字の追加  <注6>
 (2) 漢字の追加と元の字の移動  <注7>
 (3) 漢字の区点位置の入替  <注8>
 (4) 漢字の字形変更  <注9>

このなかで、一般によく問題にされるのが、(4) 漢字の字形変更です。初めに書いた、表外漢字字体表(第22期国語審議会答申)で取り上げられているのもこれに関わる事柄です。
他方、筆者によっては、(2) 漢字の追加と元の字の移動と(3) 漢字の区点位置の入替を主な問題として捉えている場合があります。「83JIS改正では非互換な変更がされた」というの場合(2)(3)を指すことが多いように思います。
83JIS改正に関する解説等を読む場合には、筆者の関心領域にも注意を向け、どの部分の何を指摘しているのかを読みとる必要があると思います。


2.規格票の刷による違い

78JIS規格票は刷によって、例示字体の一部に字形の違いがあります。

通常78JIS字形と呼ばれるものは、(第4刷)第7刷以降の字形を指しています。<注10>

ただし、InDesign で、「JIS78字形」に一括変換した場合には、存在したほとんど全ての78JIS字形に変換される、つまりどの刷にも存在しない文字セットに変換されるので注意が必要です。<注11>

78JIS字形の刷による違いについては、『JIS漢字字典』『増補改訂JIS漢字字典』(芝野耕司編著 日本規格協会刊)で詳細に分類されています。
(適宜省略書き換えするとともに、括弧内は、78誤を除き加筆しました)

 
78誤 78JIS規格票の正誤票で誤とされた字形で、誤字形であったもの。<注12>
 (51-48 嗤、54-82 幤、73-28 藜、80-19 雎)

78/1 第1刷に用いられ、1978年11月発行の正誤票で置換えられた字形。
  (17-28-閏、28-24-叱、79-69-閻)

-78/4 第4刷より前の規格票に用いられ、第4刷附属の正誤票で置換えられた字形。
  (49-41 冑、63-83 燗)

-78/4×  第4刷より前の規格票の字形索引に用いられ、第4刷附属の正誤票で置換えられた字形。
 (22-70 倶、66-08 皋)

78/4正 第4刷附属の正誤票で置換えが指示されたが、第4刷では未修整の字形。
 (見あたらず)

78/4- 第4刷以降の78JIS規格で用いられた字形。
  (16-09 逢、16-18 芦、36-52 辻、43-88 迄)

78/5 第5刷だけに見える字形。
  (28-24 叱)

 

3. 著者・筆者・ベンダーの文字セット等による違い

78JISと83JISの字形差には微妙なものもあり、著者・筆者・ベンダーの文字セット等により解釈が分かれるものがあります。その中で、代表的なものをいくつか見ておきたいと思います。


野村雅昭「JIS C 6226 情報交換用漢字符号系の改正」(「標準化ジャーナル1984年3月号」日本規格協会)   ↓一覧

83JIS原案委員会委員で83JIS改正で主導的な役割を演じたと言われる野村雅昭氏による解説。「資料2」として「漢字の字形異動一覧」が付けられています。
83JIS改正の当事者によるものなので決定版としたいところですが、「漢字の字形異動一覧」では、変更が明らかな 23-68 隙 が欠落しており、信頼性に難があるのが残念です。

欠落していると考えられるのは、23-68 隙 のほか、23-04 靴、33-47 創、45-48 熔、78-21 邉です。


Ken Lunde 『日本語情報処理』(ソフトバンク 1995)    ↓一覧

レファレンスとして定評のある著作。
元資料は、Adobe Japanese Glyph Set。
変更点は、下記の Adobe-Japan1-3 と同じです。

97JIS規格票との相違は、19-21 概、26-67 冴、27-11 捌、73-65 蛛、78-21 邉の5字。
第6刷以前の特定の刷にのみ見られるものは、含まれません。


Ken Lunde 『CJKV日中韓越情報処理』(オライリー・ジャパン 2002)    ↓一覧

『日本語情報処理』の続編。
元資料は、Adobe-Japan1-3。
第6刷以前の特定の刷にのみ見られるものは、含まれません。

そのほかに、「以下の文字が含まれる場合も考えられる」として、97JIS規格票に合わせてAdobe-Japan1-4 で追加された5字や、第6刷以前の特定の刷にのみ見られるものの一部を補足しています。


芝野耕司『JIS漢字字典』(日本規格協会 1997)
芝野耕司『増補改訂JIS漢字字典』(日本規格協会 2002)    ↓一覧

JIS X 0208:1997 原案作成委員会委員長、JIS X 0213:2000 原案作成委員会委員長の芝野耕司氏編著、現時点での公式見解と考えられます。
97JIS規格票の「参考表 各実相字形差一覧」の「78/1」(第1刷)「78/他」(第1刷以外の刷または正誤票で掲げられている字形)と同じで、97JIS規格票の「参考表 各実装字形差一覧」より詳細に分類しています。

83JISの38-86 迩 (78JISの77-78)だけが抜けています。

78JIS字形に関しては、『JIS漢字字典』と『増補改訂JIS漢字字典』の間に違いはないようです。


Adobe-Japan1-0〜3    ↓一覧

Adobe社の文字セットで、この中に78JIS字形のグリフを含んでいます。
これは、OCF、CID、OpenTypeのStd書体で使えるものです。

第6刷以前の特定の刷にのみ見られるものも大部分収録しています。<注13>
78JIS字形に関しては、Adobe-Japan1-0〜3に違いはありません。


Adobe-Japan1-4    ↓一覧

OpenTypeのPro書体で使えるもの。
97JIS規格票に合わせて、19-21 概、26-67 冴、27-11 捌、73-65 蛛、78-21 邉を追加しました。

また、第6刷以前の特定の刷にのみ見られるものも収録しており、78/5の 叱(28-24)、-78/4×の 倶(22-70)を追加しています。<注14>
ただし、-74/4×の 皋(66-08)、-78/4の 冑(49-41、70-84と同一?)は、ないようです。


その他ワープロ漢字辞典類

ワープロ漢字辞典類の多くには、78・83JIS(新旧JIS)字形異同一覧が付属していますが、選定はまちまちで、編著者独自の解釈や基準によるものが多いように思います。


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収録字形一覧 [Excel]

 野村雅昭  日本語
 情報処理
 CJKV
 情報処理
 JIS
 漢字字典
 Adobe
 Japan1
 0
 Adobe
 Japan1
 4
 CMap
 Ext
 In
 Design
 JIS78

23-04   靴  -
23-68 -
33-47 -
45-48 -
78-29 -
19-21 - * - -
26-67 - * - -
27-11 - * - -
73-65 - * - -
78-21 - - * - -
38-86 -
 
78/4- 16-09 -
78/4- 16-18 -
78/4- 36-52 -
78/4- 43-88 -
 
78誤 51-48 - - *
78誤 54-82 - - *
78誤 73-28 - - *
78誤 80-19 - - *
78/1 17-28 - - *
78/1 28-24 - - *
78/1 79-69 - - *
-78/4 49-41 - - - - - - -
-78/4 63-83 - - *
-78/4×  22-70 - - - - - -
-74/4× 66-08 - - - - - - -
78/5 28-24 - - - - - -

 野村雅昭  日本語
 情報処理
 CJKV
 情報処理
 JIS
 漢字字典
 Adobe
 Japan1
 0
 Adobe
 Japan1
 4
 CMap
 Ext
 In
 Design
 JIS78

※ 78誤の「藜」については「73-28「藜」の誤字形について」もご参照ください。

↑本文  

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<注1>
JIS X 0208 は、非漢字(1区〜8区)と漢字(16区〜84区)で構成されます。
漢字は、第一水準(16区〜47区)と第二水準(48区〜84区)から成ります。
したがって、JIS X 0208 = 第一・第二水準という表現は正確ではありません。
JIS X 0213 も便宜上、第三・第四水準と称されることがありますが、非漢字および第一・第二水準の漢字を含んだ規格です。

↑本文  


<注2>
表外漢字字体表(第22期国語審議会答申) p.2
「(1) 従来の漢字施策と表外漢字の字体問題」

 しかし、ワープロ等の急速な普及によって、表外漢字が簡単に打ち出せるようになり,常用漢字表制定時の予想をはるかに超えて,表外漢字の使用が日常化した。そこに、昭和58(1983)年のJIS規格の改正による字体の変更,すなわち、鴎(←)、祷(←)、涜(←)のような略字体が一部採用され、括弧内の字体がワープロ等から打ち出せないという状況が重なった。この結果、一般の書籍類で用いられている字体とワープロ等で用いられている字体との間に字体上の不整合が生じた。平成9(1997)年1月の改正による現行のJIS規格(JIS X O208)においては、鴎()、祷()、涜()などの括弧内の字体はそれぞれの括弧外の略字体と同一コードポイントに包摂されるという扱いに変更された。さらに、平成12(2000)年1月に、現行JIS規格(JIS X O208)を拡張するために制定されたJIS規格(JIS X O213)において、括弧内の字体が第3水準漢字として符号化されたが、現時点では、ワープロ等から括弧内の字体が打ち出せない状況は基本的に変わっていない。
 上述のような状況の下で、表外漢字の字体が問題とされるようになったが,この問題は、(1) 一般の書籍類や教科書などで用いられている「」や「」がワープロ等から打ち出せないこと、(2) 仮に「鴎」と「」の両字体を打ち出すことができたとしても、どちらの字体を標準と考えるべきかの「字体のよりどころ」がないこと、の2点にまとめられる。
(本文中の丸付き数字は括弧付き数字に変更しました)

↑本文  


<注3>
78JIS字形と印刷標準字体・JIS X 0213 追補1 との関連については下記をご参照下さい。

↑本文  


<注4>
Windows Vista に搭載された MS書体(MSゴシック、MS明朝)については、下記もご参照下さい。

↑本文  


<注5>
JIS C 6226 は JIS X 0208 の旧称。1987年に改称されました。

↑本文  


<注6>
2区に39字、8区に32字、合計71字の非漢字が追加されました。

↑本文  


<注7>
正確には、81年に追加された人名用漢字の字体に変更し、元の漢字を第二水準の最後(84区)に移動(追加)したもので、4字あります。

↑本文  


<注8>
第一水準と第二水準の区点位置を入れ替えたものが、22組44字あります。
このうち、2組3字は入替と同時に字形変更されました。

↑本文  


<注9>
250字前後の字形が変更されました。
このなかには、いわゆる「拡張新字体」だけではなく、常用漢字・人名用漢字追加に伴うもの、「いわゆる康煕字典体」に直されたものなどが含まれます。
また、新字体風の略体である「拡張新字体」、いわゆる康煕字典体ではないが一定程度使われてきた「通用字体」、字体差というよりも「デザイン差」の範疇に入れるのがふさわしいものなどが混在しているように思います。しかし、これら区別・分類は一概にはできない難しさがあるように思います。

↑本文  


<注10>
『JIS漢字字典』の記述から。
規格票の各刷を直接確認することははできていません。
97JIS規格票の「参考表 各実装字形差一覧」は、第1刷と、第1刷以外の刷または正誤票で掲げられている字形に分けていて、後者についての詳しい分類は省略されています。

↑本文  


<注11>
InDesign 2.0Jの場合。
「字形パレット」で「JIS78字形」に一括変換すると、83JISで字形変更されたものの他に、入替されたもの(字形変更と入替が同時に行われたものを含む)や、「83JIS字形」も変換されます。
追加と移動が行われたものは、変わりません。
ただし、「83JIS字形」は、書体によって字形にあまり違いのない場合もあります。


また、-78/4の冑(区点49-41)、-78/4×の倶(22-70)、皋(66-08)、78/5の叱(28-24)は変換されません。(叱は、78/1の字形に変換されます)


また、InDesign 2.0Jの「字形パレット」から個々に78JIS字形を入力した場合、書体によって異体字の扱いが異なる場合があるので注意が必要です。
例えば「喝」や「頻」などの78JIS字形をヒラギノ明朝Proで入力した場合、ヒラギノ明朝Proではユニコードとして、小塚明朝Proでは「喝」や「頻」などのJIS78字形として扱うので、ヒラギノ明朝Proを小塚明朝Proに書体変更すると書体がロックされます。つまり「喝」や「頻」などの78JIS字形だけがヒラギノ明朝Proのままになる、いわば書体化けの状態になります。強制的にロックを外すと、その文字はになってしまいます。
標準字形からJIS78字形に変換した場合は、問題ありません。


ちなみに、CMapファイルの 78-H (V)、78-RKSJ-H (V) にはこのような問題はありません。

↑本文  


<注12>
どの時点で訂正されたかは JIS X 0208 附属書7「区点位置詳説」(『JIS漢字字典』『増補改訂JIS漢字字典』収録)に記載されています。
 51-48 嗤 第1刷の字体を1978年11月発行の正誤票で訂正
 54-82 幤 第4刷の正誤票に記載され、第7刷以降訂正(第5刷は誤植)
 73-28 藜 第1刷の字体を1978年11月発行の正誤票で訂正
 80-19 雎 第1刷の字体を1978年11月発行の正誤票で訂正
 
※ 78誤の「藜」については「73-28「藜」の誤字形について」もご参照ください。

 

↑本文  


<注13>
Adobe-Japan1-0〜3の使用には注意が必要です。

↑本文  


<注14>
Adobe-Japan1-4の使用には注意が必要です。

↑本文  


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