Windows Vista の文字化け問題とは

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[07-01-10]
[07-01-17 補筆]


Windows Vista の一般販売を目前に控えて、Vista の新文字セットのよる文字化けの問題が、あちこちで取り上げられるようになりました。
確かにこの問題は、Windows Vista で新たな文字セットが採用されたことに起因することではあります。しかしこれは、Windows Vista で新たな文字セットを採用したことや、マイクロソフト社の対応に、問題があったということなのでしょうか。

マイクロソフト社が、Windows Vista のMS書体であらたに JIS X 0213(いわゆる第三・第四水準)に対応した、このことは何ら非難に値することではなく、むしろ歓迎されて然るべきことでしょう。
その際に、JIS X 0213 追補1 (JIS2004という不可解な名称が一部で使われていますが)に準拠したということは、当然といえばあまりに当然なことです。なぜなら、JIS規格は、最新版のみが有効だからです。

実際、Windows Vista の文字セットは、JIS X 0213 追補1 にきわめて忠実に従っています。
新文字セットの字形を詳細に見ると、非常に微細な違いですが、JIS X 0213 追補1 の例示字形と異なるものが、いくつかありはします。
しかし、JIS X 0208 の例示字形と従来のMS書体の関係と比べれば、Vista の新書体は、JIS X 0213 追補1 の例示字形にきわめて忠実に作られていることが分かります。従来のMS書体では、筆押さえの有無などデザイン上の問題については、JIS X 0208 の例示字形とは異なった主張を貫いていますが、Vista の新書体では、こうした部分でも、JIS X 0213 追補1 の例示字形に合わせる形での字形変更が行われているからです。


では、Windows Vista の文字化け問題とは一体何なのでしょうか。それは、JIS X 0213 追補1 の問題がはじめて顕在化した事態だとはいえないでしょうか。
JIS X 0213 追補1 の例示字形の変更は、包摂の範囲内での例示の変更に過ぎないというのが規格上の見解です。だから何ら問題とはなり得ないという主張も成り立ち得るでしょう。
しかし、ほとんどのフォントが例示字形に合わせて設計されているのが現実で、Windows Vista の新文字セットの字形も例示字形に合わせるべく変更がなされたというのが、あるがままの現実です。

いうまでもなく、JIS X 0213 追補1 は第22期国語審議会答申「表外漢字字体表」を受けた JIS文字コードの見直しの結果としてなされた JIS X 0213 の改正です。
3期にわたる審議を通じてまとめられたにもかかわらず、告示にも、法令にも、通知にすらならなかった単なる審議会答申でしかない「表外漢字字体表」に、なぜJIS規格を合わせなければならなかったのかということは置いておくとして、この「表外漢字字体表」にどのように対応したのかは、見ておく必要があると思います。

「表外漢字字体表」を受けた JIS文字コードのあり方をまとめたものには、「JCS調査研究委員会成果報告書」があり、「JIS文字コード改正の方針と具体的変更箇所」に詳細が述べられています。
JIS X 0213 追補1 は、これに沿うかたちでまとめられました。


JIS X 0213 追補1 では、「JCS調査研究委員会成果報告書」のような分類はされていませんが、デザイン上の違い、字形の違い、三部首許容に関わるもの、計168字に対して、例示字形の変更をするという対応がとられました。
規格上の見解はともあれ、これが、Windows Vista の新文字セットの文字化け問題といわれるものの直接性です。
なぜ JIS X 0213 追補1 でこのような対応を取ることになったのかは注意して見ておく必要があると思いますが、取りうる対応については、「JCS調査研究委員会成果報告書」でもごく簡単にですが触れられています。

また、JIS X 0213 追補1 では、表外漢字UCS互換として第三水準に10字が追加されました。
この10字に関する問題も、Vista の文字化け問題のひとつとして取り上げられることがあるようですが、例示字形の変更とは、少々性格を異にしています。これらの文字に対する第一・第二水準の文字に変更はなく、別字形の文字に化けるということはないからです。
ただし、「表外漢字字体表」の「印刷標準字体」を使おうとする場合には、これら第三水準に追加された文字を使わざるを得ず、その結果、表示されなかったり、別の書体(中国語の書体など)に化けたりするといったことがありえます。しかし、これまでのMS書体は、第一・第二水準、IBM外字、補助漢字を収録していたのですから、JIS X 0213 独自の文字を正しく表示できないのは当然のことで、あらためて調査の結果判明したというような性格のものではありません。
ちなみに、シフトJIS(第一・第二水準、IBM外字)のフォントでは、表示できない文字や、他の書体への置き換えに、MS書体との違いがありますし、シフトJISに特化したアプリケーションや JIS X 0208 を前提としたシステムでは、そもそもデータを読み込めないなどの問題が起こりえます。
とはいえ、不都合が起きるという意味で、Windows Vista の新文字セットが引き起こす問題のひとつとして認識される必要はあるでしょう。

同様に、第三水準を使うことになった、78JIS互換漢字(「過去の規格との互換性を維持するための包摂規準」に関わる漢字)や第一・第二水準にない漢字についても、Windows Vista の新文字セットが引き起こす問題のひとつとして認識する必要があります。これらは、JIS X 0213 追補1 で変更されたものではありませんが、「表外漢字字体表」の「印刷標準字体」を使おうとする場合には、表外漢字UCS互換として追加された10字とまたく同じ問題を引き起こすからです。
第三水準を使うことになった文字が引き起こす問題は、第三水準に追加された文字が引き起こす問題と、原因も結果も同じであるにもかかわらず、ほとんど問題視されていないようです。これは、とても不思議な現象です。

以上、簡単に Windows Vista の新文字セットにまつわる文字化け問題といわれるものを見てきましたが、この問題が、単に Windows Vista の新文字セットという個別の問題に帰着され、矮小化されることがないよう願ってやみません。

最後に、関連することがらを短い文章にまとめましたので、御一読頂けると嬉しく思います。



補筆

[07-01-16]


ある方から「JIS2004追加10字中2字や「AB包摂」のうち3字を除く大部分はJIS X 0212にあり、Vistaでも化けない」というご指摘がありました。

「その結果、表示されなかったり、別の書体(中国語の書体など)に化けたりするといったことがありえます」という表現が分かりにくかったので、若干の補足をします。

「表外漢字UCS互換として第三水準追加された10字」で「表示されなかったり、別の書体(中国語の書体など)に化けたりするといったことがある」のは、
1-94-94「倶」、1-94-93「痩」以外の8字です。

また、「第三水準を使うことになった、78JIS互換漢字(「過去の規格との互換性を維持するための包摂規準」に関わる漢字)や第一・第二水準にない漢字」で「表示されなかったり、別の書体(中国語の書体など)に化けたりするといったことがある」のは、
1-91-66「蝉」、1-89-73「騨」、1-89-73「箪」の3字です。

これらは、「MS従来書体の字形」で、〓を用いて表しています。

(このページはシフトJISで書いていますので、字体は JIS X 0208 のものです)

これは、補助漢字が使える場合のことで、すでに書いたことの繰り返しになりますが、
シフトJIS(第一・第二水準、IBM外字)のフォントでは、表示できない文字や、他の書体への置き換えに、MS書体との違いがありますし、シフトJISに特化したアプリケーションや JIS X 0208 を前提としたシステムでは、そもそもデータを読み込めないなどの問題が起こりえます。
どのような場合にどのような現象が起こるのかはさまざまで、煩雑になりますので、ここでは省略します。

ご指摘ありがとうございました。


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